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Artist

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Title

LOS GRANDES TEMAS DE ARSENIO RODRIGUEZ



Japanese Title 国内未発売
Date 1980s ?
Label EGREM CD 0339(Canada)
CD Release 2000
Rating
Availability ◆◆◆


Review

 1960年代後半から70年代はじめごろに、ニューヨークのラテン・ミュージシャンから再評価されはじめたアルセニオだが、キューバでは長らく忘れられた存在であった。それは、アルセニオが遅くとも52年には祖国をはなれアメリカに移住してしまったことと、アルセニオが去ったのちのキューバでは、かれが得意としたソン・モントゥーノよりも、もっと軽いノリのチャチャチャのようなチャランガ・スタイルの音楽が主流になったせいもあったと思われる。

 80年前後になって、ようやくアダルベルト・アルバーレスやシエラ・マエストラらキューバの新しい世代がソンの伝統を見直そうというムーヴメントのなかで、アルセニオの音楽にも注目するようになった。
 2000年にキューバ・エグレムから発売されたこのコンピレーションは、おそらく80年代の終わりごろにLPで発売された"HOMENAJE A ARSENIO RODRIGUEZ"の再編集盤である。アルバーレス、シエラ・マエストラのほかに、チューチョ・バルデース、イラケレやNGラ・バンダなど、現代キューバのミュージシャン10組によるアルセニオ・カヴァー集である。フュージョンみたいなテクニック至上主義の演奏、ダメになってからのサルサをサルまねしたもの、カンツォーネみたいなザーとらしい歌唱で背スジが凍る曲、サンタナばりの泣きのギター・ソロが意味なくはいる曲、どう見てもたんなるムード・ミュージックと、アルセニオの黒っぽいエッセンスがことごとく骨抜きにされた、思わず耳を覆いたくなるような演奏が延々と続く。

 国内リリースされたアルバーレスの『ハバナの週末』(テイクオフ TKF-CD-4)にも収録され、評判がよかった'MAMI ME GUSTO'にしても、このなかではいちばんまともな内容だが、フランシスコ・“パンチョ”・アマートのトレス・プレイはテクニックを見せつけてやろうという下心がミエミエで素直に楽しめない。最近のキューバ音楽って、なんかこう音がスカスカに抜けてしまっていて、体内にズシリとくる余韻のようなものがまったく感じられない。ここまでくれば、いっそのこと、チープなシンセやリズム・マシーン、ヴォコーダーを使って、どーしようもないテクノやニューウェーブを気どっている曲のほうがくだらないパロディとして聴けるぶんだけまだマシ。
 このひとたちはアルセニオの音楽のどの部分に共感したのだろうか疑問に思えてくる。


(9.8.01)



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by Tatsushi Tsukahara